中国人による日本への不動産投資 
                          




□まず、記事から抜粋。なお、2009年5月。末尾に筆者の感想を述べたい。


 日本の分譲マンションに新たな客層が加わった。

 それはここ10年で富を蓄えた“大陸の中国人”だ。

 彼らによる住宅購入がここ数年で顕在化し始めている。

 「ベイエリアの某マンションでは、最終購入者の名簿から中国人の名前が出てきました」 と販売に携わった不動産会社は振り返る。

 このマンションは06年前後に売り出されたもので、人気の集中する住戸は抽選が行われた。

 「絞り込まれてもこれだけ名前が出てくるということは、分母にもそれなりの数の中国人が購入を希望していたことを示すのではないか」 と推測する。

 マンションの販売センターでも中国語が飛び交うようになった。

 品のいいビジネスマン風もいれば、成金風の一団もいる。

 これらの現象は、07年秋以降、いっそう顕著になった。



 「あの物件では50〜60戸のまとめ買いがあったそうだ」――。

 まことしやかに流れる業界内のうわさ。

 その旺盛な投資意欲は大手不動産の証言に明らかだ。

 「彼らはドカンとキャッシュです。だから、こちらも“顧客情報の詳細”など細かいこと訊きません。
当然、お客様も勤務先なども明かしません」。

 だが、どうやってこの大金を手に入れたのかはわからない。

 熱気を帯びた商談は一瞬フリーズするものの、売ってはならないという法律はないし、何より彼らのバイイングパワーには抗えない。

 「最近は中国人が購入するケースが非常に目立つようになりました」と不動産流通の調査研究を行う、財団法人も指摘する。
 
 ヒト、モノ、カネが中国に集中する今、個人もまたここ10年で飛躍的にライフスタイルを変化 させた。

 中国大陸からのニューリッチには、中国の外資導入政策とともに規模を拡大させた製造業者も多い。

 設備投資をした後は機械が仕事をしてくれる、という工場経営者は金銭にも時間にもゆとりがある。

 すでに上海に複数のマンションを持ち、年間3回の海外旅行は当たり前、ブランド品にもそろそろ飽きた、という人も珍しくはない。

 「こうしたニューリッチが税金逃れに東京や大阪の不動産を買う一方で、政府幹部の個人的な 資金が流れ込んでいる可能性があります」と、投資コンサルティング会社社長D氏は話す。


 
高額物件を現金購入資金の流れに不透明感も

 商業用不動産でも中国人の買いが進む。

 最近では都心の有名ビルも中国人の資金が絡んでくるようになった。

 銀座や表参道は資産家にとっての人気スポットだとも。

 不動産登記簿謄本の取得をオンラインサービスで提供する会社の中にも、日ごろの実務から最近、中国人名義の物件が増えたことを実感するところもある。

 「多いと思います。中国語名もありますが、帰化した方によくある独特な名前や会社名からそれとわかりますね」

 表参道の某ファッションビルも中国人名義だとのうわさから、早速、登記簿を調べると、出てきたのは「特定目的会社」。

 「中国人の不動産取得に専ら使われる手法」(不動産会社)だという。

 ズバリの名前が出てこないだけに、中国から流れてきた資金なのかどうかはわからない。

 一方で、その資金源の不透明さが問題になっている。

 日本では08年3月に「犯罪収益移転防止法」が全面施行された。

 これはマネーロンダリングやテロ資金供与の防止が目的だが、最近は、 不動産売買などを利用したり、弁護士に資金の保管を依頼するなど、違法な起源を偽装するための手口が複雑化・巧妙化している。

 そのため、疑わしい取引の届け出が義務付けられる範囲が、従来の金融機関に加え、宅地建物取引業者や宝石貴金属取り扱い業者、弁護士や弁護士法人などに広がったのだ。

 これまで、申し込みと承諾さえあれば成立した外国人との間の不動産“現金”取引も、本人確認が要されるようになった。


 
「外国からのものを含めて異常なほどの金の出入りが目立ってきています。

 この宅建業においても、不審な買い方が出現したら届け出が義務付けられるようになりました」と、の財団法人。

 とりわけ中国人が大きなお金を動かすようになったと指摘する声もある。

 刑事局組織犯罪対策部のHPに掲載された「JAFIC年次報告書(平成20年)」によると、「疑わ しい取引の届出件数」は宅地建物取引で21件。

 国土交通省によれば、「極端に高額な物件をキャッシュで購入したり、『何でもいいから売ってくれ』や『早く購入手続きを終わらせてくれ』など買い急ぐ例が報告されている」。

 中国人の不動産売買はもぐりの取引も横行する。

 不特定多数の人を相手に継続、反復してこれらの行為を行う場合は、業としての宅建業に当てはまるものの、 現実にはその都度、売主の名前を変更するなどして反復性が問われない形で、「相対」で売り買いを進めているようなのだ。

 「私は日本の法律を知らない」「仲間に頼まれて買った」といい逃れるケースもあるという。

 ところで、なぜ彼ら中国人はキャッシュで物件を取得できるのか。

 日本に駐在する中国人エリートが分厚い手当てをもらい、数年で溜め込んだ資金であるとはなかなか考えにくい。

 ならば、大陸の中国人富裕層が持ってきた人民元が資金となるわけだが、基本的には中国政府は資本の自由な移動を認めていない。

 国外への持ち出しは一人当たり年間5万ドルという制限があるのもそのためだ。

 中国大陸から資金を海外に持ち出すには、例えばケイマン島を経由させたり、あるいは地下銀行を使ったり、ということになる。

 「彼らは絶対に中国からのお金だということは明かしません。もともと、法律のグレーゾーンをたくみに利用して作ったお金ですから」と受け止める事情通もいる。


 
リスクに目をつぶっても不動産会社は「売りたい!」

 そもそも、なぜ、今日本の不動産が買いなのか。
 
 中国人資産家のリスクヘッジとする見方がある。

 土地の私的所有が認められないとする国の制度と個人の財産所有に矛盾があり、「そこからの資金の逃避」というコメントはこの取材を通し複数聞かれた。

 もちろん、投資コンサルティング会社が指摘したように、経営者の税金逃れや、政府幹部らの資金隠し目的というのもある。

 また、日本ならではのメリットが強調されはじめたのも最近の特徴だ。

 「万事がコネで動く中国ではその根回しだけでも高くつく」と不動産投資コンサルティングのF社が話すように、日本での不動産取得は中国よりもはるかにコストを抑えることができる。

 ここまで不動産価格が下落すれば、資金が入り込むのも自然の成り行きなのかもしれない。

 実際、利回りも中国より日本がいいという認識もある。

 「これまで中国人には見向きもされなかった日本の不動産ですが、今、日本では中古で10%の利回りを出す物件も。

 中国人客はそこに注目しています。

 中国ではむしろそれが落ちていて、税引き後は2〜3%程度の利回りにしかなりません」(不動産会社)。

 また、中国の不動産に「資産価値」が認められなくなったことを指摘する声もある。

 中国の不動産管理会社に勤務するG氏は「たった2年の築年数でも見た目20年に相当するようなマンションが中国には多い。管理が悪すぎて老朽化の進行が早いのです」。

 資産価値を急速に失う中国のマンションから、長持ちする日本のマンションへのシフトだとG氏は見る。

 06年をピークに人口が減る日本では、不動産業界も斜陽化する産業の一つに数えられている。

 ましてや上場企業さえもが倒産の憂き目に遭う昨今、どの不動産会社も売らんがためにあの手この手。

 そこに現れた “キャッシュでドカン”の中国人はまさしく“最優良顧客”というわけだ。

 都心の不動産会社のなかには、この春、中国人投資家向けの営業部門を立ち上げたところも ある。

 確かに、日本の不動産在庫を流通させ、金回りのいい世の中にするための近道ではある。

 だが、名乗りを上げた企業の対日投資とは異なり、取引は常に水面下、資金は出所不明とい うリスクを常に抱えることになる。

 日本の不動産会社も「売りたい」、中国の資産家も「買いたい」。

 この需要と供給はどういう形で着地点を見出すのだろうか。




□補足、感想など

 う〜ん。

 中国という国も人もリスクが高いことは間違いない。