□知の集積を
   自治体の企業誘致を巡って




■自治体で、大手製薬会社の研究所の建設を巡って補助金の額のみが取りざたされた。

 しかし、企業には企業の経営上の判断があり、より多くの補助金を提示した大阪府は誘致に失敗した。

 このあたり、自治体の思惑は的を射ていたのだろうか。まず、記事をご紹介したのち、末尾に筆者の感想を述べたい。




 -以下、新聞から引用-  なお、赤線は筆者による。

 
地球規模で事業を展開する企業の関心をどのように引きつけ、ヒト、モノ、カネを配分してもらうか。

 全国の自治体がグローバル企業の誘致合戦を繰り広げている。補助金の積み増し競争が過熱する一方で、企業側との認識のずれも目立ち始めている。

 神奈川県八十億円、大阪府二百億円、大阪に本社を置くt薬品工業が設立する新研究所を巡り、二つの自冶体は多額の補助金を提示した。

 激しい綱引きの末、神奈川県藤沢市に軍配が上がったが、tは補助金にはそれほど重きを置かなかった。

 主力製品の特許切れか相次ぐtは次代を担う新薬開発を急いでいる。
 2010年度をめどに開設する新研究所には、大阪など国内に3カ所ある研究所の機能をすべて移し、基礎研究から創薬研究に至る全機能を持たせる予定だ。

 
候補地選びで最優先したのは「グローバルな視点で研究開発を進めるのに最適な場所かどうか」だという。

 tの新薬開発の成功確率は、世界大手の水準には遠く及ばない。新薬の開発が自社だけで完結する例は少なく、欧米の研究機関やベンチャー企業、大学との共同研究に頼らさるを得なくなっている。

 侮外とのネツトワーク作りを強く意識する経営陣は、神奈川に地の利があると判断した。

 本社を置く自治体や地域社会との関係、総投資額なども念頭に置いたが、優先順位は低い。

 一兆八千億円にのぼる余裕賃金を持つtにとって補助金は決め手にはならなかった。

 グローバル企業が国内拠点の立地を決める際の判断材料はいくつかあるが、補助金だけに注目する企業は少ない。

 三重県の誘致に応じて液晶工場を建設したsの社長でさえ、「自治体の企業誘致は過熱気味」と苦言を呈する。

 工場、研究所、本社機能など部門による違いを考慮せす、一律に誘致を働きかける自治体の姿勢に、違和感を覚える経営者も少なくない。


 
研究部門の場合、グローバル企業は世界の情報・知識・技術が集まる「知の集積」を強く求めるようになっている。

 知の集積を左右するのは人材。魅力的な人材があふれる地域には黙っていても企業が集まって来るだろう。

 企業誘致に目の色を変える自治体は多いが、目先の実績にこだわるあまり、長期的な視野に立って地域の将来を担う人材を育成・確保する努力を忘れかちな面がある。


 
その結果、補助金の額ばかりに目がいき、肝心の企業を取り逃がすことになる。

 企業にとっても、一部の地域に拠点や経営資源を集中させる戦略はリスクか大きい。

 その点を熟知するグローハル企業は、世界レベルで生産や研究開発などの拠点分散を進めている。ところが、日本では特定の都市に拠点が集中する傾向が強まり、災害などの緊急時に業務を継続する「事業継続計画」(BCP)の不備も指摘される。


 
グローバル企業は拠点の立地で何を重視し、今の地方には何が欠けているのか。企業と自治体が率直に意見をぶつけ合うことは、企業の国際競争力を高めるうえでも無駄にはならないはずだ。

-引用おわり-






■補足、感想など

 核心はなんだろうか。

 まず、企業の判断と自治体の判断基準が異なるということだろう。

 また、三重県のSの誘致の成功例に自治体も目を眩まされているのではあるまいか。

 これは、自治体側が自らの強い点、弱い点をよく分かっていない、ということなのだと思う。

 tの例について言えば、記事にあるごとく、研究所であれば東京に近いということは大事なことであったろう。

 大阪府の場合、いまだ山林のところを示して、200億円の補助金を出すから…という話ではないか。

 記事にあるごとく、「知の集積」どころではなく、現状山林では、とても勝負にならない…ということが企業の経営上の判断であろう。

 知の集積というものが、すべての企業にとって魅力的がどうかは分からないが、まず、知的かつ技術的に優位な環境ありき、という視点は企業誘致(しいては、地価にも影響を及ぼすのだが)にとって大事だと思える。