■藻から石油をつくる   
…オーランチオキトリウム 



□始めに。  なお、画像は、炭化水素をつくる藻 オーランチオキトリウム。

 2010.12月に、日本の筑波大学から藻から石油をつくる…というニュースが発表された。
 すぐにニュースから消されたが、これは国際的に衝撃が大きすぎる内容だからだろう。

 話は違うが、中東付近で笑い話があるのだとか。

 
クウェートの国民が、日本人を恐れているのだそうだ。それは、日本の技術力が、石油の代替品を作って、クウェートの産油国としての地位を脅かすのではないか…と。

 →その笑い話が、ちっとも笑い話ではなくなったようだ。
  その位、国際社会への影響の大きな技術ということであろう。

 冒頭の発表があって半年を経過し、国会とかテレビとかでぼつぼつ出始めた。



□2010.12月の新聞記事から、見直してみよう。

★生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見

・藻類に「石油」を作らせる研究で、筑波大のチームが従来より10倍以上も油の生産能力が 高いタイプを沖縄の海で発見した。

 チームは工業利用に向けて特許を申請している。

 将来は燃料油としての利用が期待され、資源小国の日本にとって朗報となりそうだ。

 茨城県で開かれた国際会議で14日に発表した。

 筑波大の渡邉信教授、彼谷邦光特任教授らの研究チーム。

 海水や泥の中などにすむ「オーランチオキトリウム」という単細胞の藻類に注目し、東京湾やベトナムの海などで計150株を採った。

 これらの性質を調べたところ、沖縄の海で採れた株が極めて高い油の生産能力を持つことが分かった。

 球形で直径は5〜15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。

 水中の有機物をもとに化石燃料の重油に相当する炭化水素を作り、細胞内にため込む性質がある。

 同じ温度条件で培養すると、これまで有望だとされていた藻類のボトリオコッカスに比べて、10〜12倍の量の炭化水素を作ることが分かった。

 研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せる。

 「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」としている。

 炭化水素をつくる藻類は複数の種類が知られているが生産効率の低さが課題だった。

 渡邉教授は「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に1リットル 50円以下で供給できるようになるだろう」と話している。

 また、この藻類は水中の有機物を吸収して増殖するため、生活排水などを浄化しながら油を生産するプラントをつくる一石二鳥の構想もある。



  (画像は、オーランチオキトリウムを培養しているところ)


□さて、この藻の名前を「オーランチオキトリウム」というのだが、これを発見した経緯、培養方法等が、別のニュース源に書いてあったのでご紹介したい。
 なお、答えているのは、筑波大学の渡邊信教授。

□答え。

 今回のオーランチオキトリウムは、オイルの生成量でいえばボトリオコッカスの3分の1ですが、増殖スピードが36倍と速いのが特長です。

 生産効率は従来に比べて単純計算で12倍になるわけです。


問い このような株を採取できたのは、どうしてでしょう?

□答え。
 宝くじのように、たまたまそういう株を引き当てたと思っていらっしゃる方もいますね(笑)。
それが科学と言えるのかと。

 しかし、闇雲にあちこちから採取すれば、よい株が採れるとは限りません。

 私たちも幸運を引き当てるために、周到な準備をしました。

 
藻類に関する論文を相当数調べたところ、オーランチオキトリウムの仲間がオイルを作るという報告がありました。

 それこそ乾燥重量で0.1%程度と極めて少ないながらも、先述のスクアレンを作るものがいるというのです。

 そこで、論文から場所の当たりを付けて日本近海で150株採取したところ、今回の株が見つかったというわけです。

 勝率の低い賭でしたが、何とか当たりを引くことができました。

 株が見つかるまでに1年半かかりましたが、これは随分早い方でしょう。

 遺伝子組換えや品種改良だと、10年や20年かかったかもしれません。

 探索という手段には、これだけのスピードがあります。

問い─オイル生産効率の高いオーランチオキトリウムが採取されたことで、バイオ燃料の研究も一気に弾みが付きそうですね。生産効率やコストはどれくらいでしょう? 
 光合成する藻類とは培養の仕方もまったく変わってくると思いますが。


□答え…その辺の話は、まだ先の段階ですね。

 光合成の藻類を使うにせよ従属栄養藻類にせよ、まだ研究室レベルのデータを元に推測しているに過ぎず、実規模でのデータがないのです。

 
これまではどんなにラフに計算をしたとしても、コスト的に絶対に実用化できませんでした。

 そこに高い潜在能力を持ったオーランチオキトリウムが見つかり、実用化できる可能性が見えてきたということです。




□答え…
 有機物を含んだ排水、有機排水が家庭や工場から大量に出てきます。

 これをオーランチオキトリウムのエサとして利用しようというのが、私の考えです。

 現在、下水等の有機排水を処理するためには、最初に固形物を沈殿させ、その後の一次処理水に活性汚泥というバクテリアの塊を投入しています。

 
一次処理水には有機物が多く含まれていますから、活性汚泥の代わりにオーランチオキトリウムを投入すれば、オーランチオキトリウムが排水中の有機物をエサとして炭化水素を作ることになります。

 オーランチオキトリウムが処理した後の二次処理水には、窒素とリンが大量に残っていますから、この二次処理水にボトリオコッカスを投入し、やはり炭化水素を作らせます。

 炭化水素を抽出した後のオーランチオキトリウムやボトリオコッカスは、動物の飼料やメタン発酵に利用できるでしょう。



問い-藻はどのように培養するのでしょう?

□答え…

 
光合成をしないオーランチオキトリウムの場合は、地下に閉鎖系の培養環境を作るのがよいでしょう。

 地下なら冬場でも15-20℃くらいで水温は安定しており、15℃なら6時間、20℃なら4時間で倍に増えます。

 オーランチオキトリウムには光を当てる必要がないため、広い面積が必要ありません。
 工場のすぐ横にオーランチオキトリウムの培養タンクを設置して、工場の排熱を利用するといった方法も使えそうです。

 現在、発酵微生物で使われているノウハウや設備をそのまま流用できますから、研究は加速度的に進むのではないでしょうか。


 光合成するボトリオコッカスの場合は、休耕田のような開放系で培養するか、人工的に光を当てる閉鎖系で培養することになります。

 開放系はコストが少なくて済むというメリットの反面、他の微生物が混入するなど環境制御が難しいという問題点があります。

 一方の閉鎖系は、環境制御が簡単ですがコストがかかります。

 開放系のデメリットは、特殊な環境で生きるように藻を品種改良することで解決できるかもしれません。

 例えば、塩分濃度が海水の2倍という環境で生きられるようにすれば、他の微生物の混入を防げるでしょう。

 閉鎖系に関しても、使い捨てのソフトプラスチックバッグを使ってコストを下げる方法が研究されています。



問い─アメリカは新しい技術に対する投資の仕方が大胆ですよね。100のベンチャーにまとめて投資して、そのうち1つが大成功すればいいという。

□答え…

 そういうやり方でいいんです。
 世界で消費されている原油が50億トン、1リットル当たり50円としたら、250兆円の市場がすでに存在するわけです。

 
バイオ燃料は、ものすごくリターンの大きい世界なんですよ。

 それは日本が産油国になるということだけではありません。

 世界のパワーバランスすら変える可能性を秘めています。



問い─エネルギー資源が特定の地域、国に偏るのではなく、遍在するということですね。

□答え…

 そういうことです。

 技術さえあれば、誰もがエネルギーを手に入れられるようになります。

 私は、エネルギーが潤沢になることで、世界が抱える問題のかなりの部分を解決できるのではないかと考えています。

 
人類をエネルギー資源の制約から解放する、これこそが、全人類が待ち望んでいるイノベーションではないでしょうか?


□最後にこの渡邊先生の風貌を。





□まとめ、感想など

 記事の内容は実験室レベルでの話であるから、工業化する、大規模化するなかで、多くの特許を生み出そう。

 でも、日本人なりゃこそのペースでことが進んでいるようだ。

 渡邊先生は、エネルギーフリーの時代がくる…と言われる。

 少なくとも、安価に自国が使用する液体燃料は、自国で生産できる時代がくる…ということだ。

 人類に夢を持たせてくれる技術だと言えよう。





■2011.8.16 

 新聞に以下の記事が載っていた。





□まとめ、感想など

 記事を読んで、本命の「オーランチオキトリウム」でか…と一瞬思った。
 が、読んでいると、本命の前のポトリオコッカスでの実験のようだ。

 場所がアメリカであり、まず、ポトリオコッカスで大量生産の技術を開発して、それから本命の「オーランチオキトリウム」でということであろう。

 また、実験場もたぶん日本に作ることになろう。

 それこそ、中東の産油国の地位を転覆しかねない程の技術だ。
 用心に用心を重ねているようだ。

 しかし、ここでdic が一歩先んじて、このプロジェクトに参加したことになる。本命のオーランチオキトリウムの場合も、dic が優先しそうだなぁ。