■造船火災の教訓



数年前に、豪華客船を建造中に火災が発生したことがあった。

 結局、この船は火災がおさまった後、艤装をやり直して完成にこぎつけたのだが…。

 この時の失敗がどのようにして起きたのか、m重工業が職人・造船技術者に聞いたものをまとめている。

 以下、新聞から。 -筆者が抜粋…




建造中の豪華客船の火災など工場での不祥事が相次いだm重工業が、その原因を検証した。

 若手従業員の未熟さより、熟練工がマニュアル頼りで知恵を絞らなくなり、工程間の縦割りがひどくなった影響が大きいと指摘。

 マニュアルの大幅削減に乗り出すほか、事故について社員の証言を集めたビデオを製作、教材として活用する。


 昨年10月の長崎造船所での客船火災後に社内に設けた現場管理改革委員会が、企業風土にメスを入れようとまとめた。

 関連する人事制度の改革案を詰め発表する。


 生産工程に関する同社のマニュアルは、1製品の生産部門だけで200以上ある。

 世代間で技術を円滑に伝える狙いだったが、「作業が効率化した半面、現場の判断能力が低下した」と自己批判。

 「作業員が担当以外に干渉しなくなった」と縦割りが進んだことのマイナス点もあげた。


 客船火災では、発見者が119番通報より上司への連絡や自己消火活動を優先したことが延焼を招いたとされる。

 この背景にも、マニュアルに基づく「ルールの重装備があった」と認めている。

 今後、作業手順や安全管理に関する全マニュアルをゼロから見直し、必要最小限に絞り込むという。


 経営陣は登場せず、客船炎上などの現場映像に加え、居合わせた作業者やその監督者十数人にインタビュー。

 「作業への慣れがあった」「現場に出る時間が減っていた」など率直な声が集まったという。社外には公開しないが、全国の工場で社員に見せる。


 「失敗学会」の主宰者で、工学院大の畑村洋太郎教授は「大事かどうか判断するな、決まった通りやりなさいというのがマニュアル化だが、うまくいく方法しか取り上げない。

 どんな失敗が起こりうるかを自ら考え、その道筋を断つという逆の発想をしないと、弱くなった製造現場は生き返らない」と話している。




■筆者の感想

 まず、感心したのはこういう失敗の原因と突き止めようとすること、社内だけには公表しようとする姿勢だ。

 さすがに老舗のm重工だ…と思った。

 この核心は、マニュアルが優先して、自分の頭で考える力が衰えた…という表現を使っているかどうだろうか。


 
マニュアルは、たしかに知恵のようなものを伝承しようとか、ミスを少なくしようとかの目的で作られたものであろう。

 しかし、実際に運用されているうちに、「責任の範囲」というものを決めてしまったのではないか。

 つまり、こういう事態になったとき、これだけのことをすれば、後から責任を問われない、意地悪く言えば、責任のがれの手段となってしまったのではないだろうか。

 だからこそ新聞記事にもあるごとく出火の際「発見者が119番通報より上司への連絡や自己消火活動を優先した」のではないだろうか。


 こうしてみると、1980年代アメリカでの笑い話のように言われていたことを思い出す。

 細かい作業分担があって、その領域を侵すと仕事をとったことになる。

 だから、荷物を降ろすのでさえ難しいのだ…とか聞いたことがある。

 ああいうアメリカの状況に近づいてきた…ということなのか。
 
 マニュアル化が悪いといっているのではない。
 作業の効率化とかで意味があろう。

 しかし、アメリカのかっての悪弊をそのまま踏襲する形になるのはどうしてなのだろうか。

 批判の目をもたずに、日本に取り込んでいるのではないのか。

 
自分の頭で考える…そういう部分をとりこんだ日本的なマニュアル化を期待したい。

 そのことが、「どんな失敗が起こりうるかを自ら考え、その道筋を断つという逆の発想をしないと、弱くなった製造現場は生き返らない」という指摘に対する答えとなるのではないだろうか。