■レアメタルを微生物で回収する



         黒い点は金の粒子なのだという。
                         上は断面図


□2008.11月の記事から。


 
まず、抜粋を載せたい。


 
工場排水に含まれる金やプラチナなどの希少金属(レアメタル)を、微生物の「呼吸」を利用して回収する方法を、小西大阪府立大教授らが開発した。

 従来の方法より作業時間が短く、費用も少なくて済む。
 企業にも共同研究を呼びかけ、実用化をめざす。

 希少金属は、パソコンや携帯電話に不可欠だが、埋蔵量が少なく、価格が高騰している。

 小西さんらは、海川にすむシワネラ・オネイデンシスとシワネラ・アルジェという微生物の性質に着目した。

 これらの生物は呼吸の際、酸素の代わりに泥の中の鉄イオンを取り入れ、別の鉄イオンにして体外に出す性質をもつ。

 この「鉄呼吸」をレアメタルの回収に活用できないか研究を進め、レアメタルのイオンを取り込み、体内で金属粒子に戻させることに成功した。

 200ppmの金イオンが溶けた水溶液の実験では、30分でほぼ全量の金を回収できた。

 同じ濃度の排水1トンならば、200グラムの金を回収できる計算だ。

 金のほか、プラチナや、排ガス浄化用の触媒に使われるパラジウム、ロジウムの計4種類が回収できた。

 排水からレアメタルを回収する手法はいくつかあるが、大半は、水溶液に電流を流して化学反応を起こさせるなど、煩雑な工程が必要だ。

 「鉄呼吸」を利用する方法では、レアメタルの濃度が低くても回収でき、時間も短く、作業も簡略化できる。

 金属工場の排水には、鉱石の精錬作業で取りきれなかったレアメタルが多く含まれている。

 小西教授は「基礎技術はほぼ確立できた。

 排水の中で微生物が流出しない工夫を進め、実際に工場で利用できるようにしたい」と。




▲まとめ、感想など

 なにか夢のある研究だな、と思う。

 世間では金融不安とかいうが、こんなところにこんな宝物が眠っている、それに気がつくかどうかだけの差なんだなぁ。

 


□2009.6月の記事から。

 上の記事に類似?しているのか、
遺伝子を組み替えた酵母をつかって、金属を回収するという技術を京大で開発したようだ。

 記事から抜粋。

 京都大学の研究チームは、工場廃水などに含まれるレアメタル(希少金属)のモリブデンやニッケルなどを、遺伝子組み換え酵母を使って回収する基礎技術を開発した。

 レアメタルは価格変動や輸出規制の影響を受けやすく、廃棄電子部品など「都市鉱山」からの回収・再利用が注目されている。

 新技術は廃水や海水中の微量金属の回収に道を開き、都市鉱山の可能性を広げそうだ。

 京大の植田充美教授らが開発したのは、遺伝子組み換え技術により酵母の表面に金属とくっつく性質をもつたんぱく質を作らせ、有用金属を回収する技術。

 生物が体内の微量金属を巧みに利用する働きに着目した。

 レアメタルなどを微量に含む溶液に、培養した組み換え酵母を入れると、酵母表面に金属がくっつき、重くなって沈殿する。

 これを別の溶液に移して濃縮し、酸性・アルカリ性を調整すると、たんぱく質との結合が解けて金属を回収できる。

 この酵母は10億個程度まで簡単に培養できる。

 増殖させた酵母を金属濃度が1PPB(PPBは10億分の1)以下の溶液に入れて実験したところ、モリブデンは約7割、 ニッケル、カドミウム、銅はほぼ100%回収できた。

 溶液に酵母を入れてから金属の分離までに要する時間は1時間程度という。






□まとめ、感想など

 酵母を使う…ということろがなんともと思う。

 日本の醗酵なとの技術の延長上にこのようなものがあるということになんとも驚く。

 古めかしいというか、従来の技術の中に、未来を切り開く様々な種が潜んでいるということではあるまいか。




□酵母菌について、辞書で調べて転記しよう。


■酵母菌類


 子嚢菌類に属する酵母、担子菌類に属する酵母、不完全菌類に属する酵母の三群を酵母菌類という。

 酵母とは分類学の用語ではなく、菌類のうち、次の性質のいくつかをもつものをいう。

〔1〕裸の子嚢を形成する。
〔2〕外観が泡沫状で、糸状にならない。
〔3〕出芽によって増殖する。
〔4〕アルコール発酵を営む。

 このため、学者によって酵母として取り扱う範囲は異なっている。

 酵母菌類は、その形態を肉眼で確認できない顕微鏡的な微生物で、葉緑体を欠き、独立栄養によらず、従属栄養によって生活し、自然界の至る所に分布、存在している。

 土壌、海水、淡水、高等植物の花、茎、葉の表面ならびに広葉樹の傷口より溢出する樹液中、高等動物の体の内外ならびに排泄物などに存在、繁殖する。

 自然界の生態系のなかでは糖類などの分解に携わるので、物質循環の初期分解者としての役割を果たしている。

 
清酒、ビール、ぶどう酒などのアルコール飲料の醸造、パンの製造、食用、薬用、飼料用酵母の製造、核酸の製造などに用いられる。

 また、なかには、ヒトを含む高等動物に寄生し、カンジダ症、クリプトコッカス症といった疾病の原因となる酵母もある。



■生殖■

 酵母菌類の栄養摂取は細胞膜を通して行われ、栄養となりうるものは水溶性のものに限られる。
 吸収された栄養分は細胞中の酵素によってさらに分解され、細胞の構成ならびに増殖に用いられる。

 従来は炭素源としての糖類、エタノール(エチルアルコール)、糖アルコール、有機酸についての酵母の同化作用が知られていたが、最近では、石油化合物(とくにノルマルパラフィン)、メタノール(メチルアルコール)などを同化する酵母が知られるようになった。

 発酵性酵母には、含糖液中で液面に浮かび、泡沫中に粘着して「泡状」となって沈下するものと、発酵後速やかに器底に沈んで透明になるものとがある。

 前者を上面発酵酵母、後者を下面発酵酵母といい、液面に繁殖して皮膜をつくるものを産膜酵母という。

 
酵母菌類は、空気が十分にある環境下では呼吸作用を営み、空気が少ない環境下においては糖類を分解してエタノールと二酸化炭素をつくる。

 アルコール発酵は空気が不足している環境下での一種の呼吸法で、空気が多量にある場合には、糖が酵母増殖のエネルギーとして使われ、多くの菌体がつくられる。


 パン酵母、食用・薬用酵母の場合は通気をよくして、多量の菌体を製造する。
 酵母菌類の発育温度は、特殊なものを除いて25〜30度Cであり、一般に40度Cを超すと死滅するものが多い。

 酵母菌類においては、有性世代と無性世代ではそれぞれ形態的な特徴がある。
 有性世代には子嚢中に子嚢胞子が形成される場合と、担子柄(前菌糸ともいう)上に担子胞子(スポリディウム)が形成される場合がある。

 子嚢胞子は球形、楕円(だえん)形、山高帽子形などさまざまであり、子嚢中の数は1〜4個が多いが、8個以上の多数にわたるものもある。

 担子柄は有隔(有膜)性のものと無隔性の場合があり、形成法も、独特の「かすがい」構造をもつものと、ないものとがある。

 また、有性生殖には雌雄同株と雌雄異株の二通りがある。

 無性世代の細胞は、球形、卵形、長卵形などの単細胞状の場合と、仮性菌糸や真性菌糸を形成する場合がある。

 酵母菌類の細胞構造は他の菌類と同様に発達したものであり、細胞壁は厚く強固で、グルカンとマンナンを主体とし、少量のグルコサミン、タンパク質、リンを含む。

 核は核膜をもち、核分裂は有糸分裂による。細胞質は原形質膜に囲まれた小胞体である。


■分類■
 酵母菌類は次の三群に分類される。

(1)子嚢菌類の酵母 原生子嚢菌類(綱)、エンドミセス目に属し、エンドミセス科、サッカロミセス科、スペルモフィトラ科の3科に分類される。
 エンドミセス科は菌糸状細胞が発達し、エンドミセスEndomycesが有名である。

 サッカロミセス科は酵母菌類の中心となる群で、生活環の大部分を単細胞状態で過ごす。
 シゾサッカロミセスSchizosaccharomyces(分裂酵母)、サッカロミセスSaccharomyces、ピキアPichiaなどの二十数属がある。

 サッカロミセスのなかには、サケ(日本酒)酵母、ビール酵母、ぶどう酒酵母、パン酵母などが含まれる。

(2)担子菌類の酵母 分類上の位置については論議がなされている段階であって決定していないが、ロドスポリディウムRhodosporidium、フィロバシディウムFilobasidiumなど数属が含まれる。

(3)不完全菌類の酵母 酵母状不完全菌類(綱)に属し、スポロボロミセス科とクリプトコックス科の2科に分類される。
 スポロボロミセス科のものは射出胞子を形成し、系統的には担子菌類に近縁と考えられる。

 クリプトコックス科にはカンジダCandida、クリプトコックスCryptococcus、ロドトルラRhodotorulaなど十数属が含まれる。

 カンジダ属にはカンジダ症の病原菌となるものや、食用、薬用酵母となるものがあり、クリプトコックス属にはクリプトコッカス症の病原菌となるものがある。
 ロドトルラはカロチノイド色素を生産し、赤色酵母とよばれる。

 これら不完全菌類に属する酵母は、生理、生化学的研究が進むにつれて、子嚢菌類や担子菌類との系統学的関連性が解明されることが期待される。