■究極のエコカー    
…リアカー


□2009.6月の記事から。

リヤカーがオフィス街で急増している。

 きっかけは3年前の改正道路交通法の施行だった。

 路上駐車の取り締まりが厳しくなる中、対象外の「軽車両」に宅配業者が目を付け、大手3社の保有台数は昨年度末で約1900台に達した。

 環境への関心の高まりを追い風に、究極のエコカーの快走は止まらない。


□のんびり感
 大阪・船場。重さ100キロを超える荷物を積んだヤマト運輸のリヤカーが、電動アシスト自転車に引かれて走る。

 この地域の集配センターへの配備は2台。

 担当のyさんは「駐車違反にヒヤヒヤすることもない。もう配達にリヤカーは欠かせません」。

 町の視線も優しい。
 繊維卸会社に勤める男性(45)は「昔のごっついのに比べると、コンパクト。のんびりした感じがいい」と話す。

 ヤマト運輸がリヤカーを試験的に導入したのは2002年。
 06年の改正道交法施行後台数を増やし、今年3月末現在、 全国で約1700台がオフィス街を中心に走り回っている。

 他の宅配業者も後を追う。
 郵便事業会社は06年10月に導入し、今年3月末までに120台を配備。
 佐川急便も約70台を保有する。

 両社は「今後も数を増やします」と口をそろえる。


□CO2削減
 環境への配慮を前面に掲げる業者もある。
 07年7月に「エコ配」(東京都千代田区)を創業したのは、運送会社の元社員たち。

 「二酸化炭素を排出するアイドリングは、お客さんも快く思っていないはず」と人力輸送を思い立った。

 現在、配送車両350台のうちリヤカーが120台を占める。
 配達地域は東京、名古屋、大阪の主要都市に限定。

 リヤカーで配達した総距離は42万キロで、二酸化炭素の排出を約100トン削減したことになるという。

 リヤカー製造大手「ムラマツ車輌」(東京都荒川区)には、宅配業者などから次々と注文が舞い込む。

 特に小型で軽量タイプの注文が急増し、昨年は300台を出荷した。
 「リヤカーの価値が見直された」とm社長(61)は感慨深げだ。(>>



□通行の妨げ?
 一方で、自動車との速度差が原因の事故や渋滞を懸念する声もある。

 松澤俊雄・大阪市立大経済学部教授(交通政策)は「車幅があり、低速なので通行の妨げとなり、新たな交通問題を生み出す可能性がある。

 大きさを制限するなどのルール作りも必要ではないか」と指摘する。

 ヤマト運輸によると、配達員からは、「クラクションを何度も鳴らされたり、無理な追い抜きをされたり、危険を感じる」という声も上がっているという。

 このため、年に数回、安全講習会を開き、車体の操縦方法などを指導している。

 郵便事業会社は、「坂道は自転車を降りて手で押す」「道路脇を通行する」などの社内ルールの徹底を図っているという。



□人と人の絆
 リヤカーでのサハラ砂漠縦断や世界一周などで知られる冒険家のnさん(53)は、どう見るか。

 「リヤカーは見た目以上に重いものを運べる。スピードはゆっくりだが、その分、人と人の絆(きずな)が深まる。

 ゆったりとしたリヤカーに共感できる社会であってほしい」






□まとめ、感想など

 
ある限定された地域の中で、ある限定された仕事をするという目的から、最終的にリアカーが選択されたということであろう。

 それは、時代がどうこうという問題ではない。

 今まで、便利ということと動力化・大型化というものは、ひっついていた。

 ところが、日本の都市部において、動力化・大型化というものが返って足かせとなってしまった。

 その先に、古くて新しいリアカーが出現したということなのだろう。

 なにか、その回帰というところに面白さを感ずる。

 このところ、なにか大きな回帰現象とでもいうべき事象を多くみる。

 海外から入ってきた新奇なものに挑戦してみるうちに、従前、当たり前のように使っていたいわば古いものの価値を見直す…というようなことだ。

 日本の古来からの智慧を再発見というところだろうか。